個人経営の小規模門前薬局が終了?財務省が狙う「1,800枚の聖域」撤廃の衝撃

7 min

財務省が集中率規制を厳格化。「今は基本料1だから安心」の中規模門前薬局が、2026年改定で基本料2に転落し年間1,368万円の減収も。処方箋1枚あたり38点減の連鎖効果で、あなたの年収が200万円減る可能性があります。

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目次

「うちは小規模だから安心」は大間違い:個人門前薬局がターゲットに

財務省の調剤報酬改定提言を読んで、背筋が凍る思いがしました。今回のターゲットは、これまで「聖域」とされてきた個人経営の小規模門前薬局だからです。

私が調剤薬局で働いていた頃、近隣の個人薬局の社長がこう言っていたのを覚えています。「うちは月1,800枚くらいだけど、集中率が高くても枚数が少ないから基本料1なんだよ。小規模の特権だね」と。

しかし、この「小規模の特権」が2026年改定で消滅する可能性が高いのです。

財務省は今回、「処方箋受付回数の多寡にかかわらず、集中率が高い薬局は基本料1から除外すべき」と提言しています。

現状のルール(2024年改定):

  • 1,800回超〜2,000回:集中率95%超で基本料2
  • 1,800回以下:集中率が高くても基本料1(45点)

2026年改定の予測シナリオ:

  • 財務省案: 枚数に関係なく、集中率95%超なら一律基本料2へ
  • 現実的な落とし所: 1,200枚以上1,500枚以上に対象を拡大

これまで「うちは1,500枚だから大丈夫」と安心していた個人薬局が、一気に基本料2(29点)へ転落するリスクが出てきたのです。

これが実現すれば、個人が運営する小規模門前薬局は「終了のお知らせ」と言っても過言ではありません。基本料の大幅減額に耐えられる体力がないからです。

この記事では、以下の内容を詳しく解説します

  • 財務省が狙う「小規模薬局の特例撤廃」の全貌
  • 月1,800枚の個人薬局が基本料2に転落した場合の収益シミュレーション
  • 「パパママ薬局」が相次いで閉局する未来
  • 沈みゆく個人薬局から脱出すべき薬剤師のタイミング

今までは「小さい薬局は大変だから」って守られてたけど、もう容赦しないってことだね。

クロ

クロ

シロ

シロ

えぇっ、個人薬局って街にいっぱいあるよね? それが潰れちゃうの?

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調剤基本料の現状:85%の薬局が「基本料1」を維持している

まず、現在の調剤基本料の仕組みを整理しましょう。

調剤基本料の区分(2024年度)

区分点数主な算定要件
調剤基本料145点処方箋集中率が一定以下、または受付回数が多い
調剤基本料229点中規模薬局で集中率が比較的高い
調剤基本料3イ24点大型チェーン薬局(特定条件)
調剤基本料3ロ19点大型チェーン薬局(より厳しい条件)
調剤基本料3ハ35点大型チェーン薬局(一部要件を満たす場合)

処方箋集中率とは、特定の医療機関からの処方箋が全体の何%を占めるかを示す指標です。

現行の集中率要件(基本料1→2への境界):

  • 処方箋受付回数が月2,000回以下の場合:集中率95%超で基本料2
  • 処方箋受付回数が月2,000回超4,000回以下の場合:集中率85%超で基本料2
  • 処方箋受付回数が月4,000回超の場合:上位3医療機関の集中率合計が70%超で基本料2

私が管理薬剤師をしていた薬局は、月間3,500枚で集中率85%でした。ギリギリ基本料1を維持できていましたが、もし集中率が86%になれば基本料2に落ちる、という綱渡り状態でした。

財務省の狙いは「小規模門前薬局」の特例剥がし

現行の「小規模優遇」ルール

現在の調剤報酬では、小規模な薬局は集中率が高くても許容される「特例」があります。

現行の集中率要件(基本料1→2への境界):

  • 1,800回以下:集中率が高くても基本料1
  • 1,800回超〜2,000回:集中率95%超で基本料2
  • 2,000回超〜4,000回:集中率85%超で基本料2

つまり、月1,800枚以下の薬局なら、特定の病院から99%の処方箋を受けていても「基本料1(45点)」が算定できるのです。これが、多くの個人経営門前薬局が生き残れている理由です。

財務省「枚数が少なくても集中率が高いなら減額すべき」

しかし、財務省はこの特例を問題視しています。

「処方箋受付回数の多寡にかかわらず、処方箋の集中率が高い薬局は、調剤基本料1の適用対象から除外する方向性を徹底すべき」

これはつまり、「1,500枚だろうが1,200枚だろうが、特定の病院に依存しているなら基本料を下げるぞ」という宣告です。

もちろん、財務省の案がそのまま通るとは限りません。しかし、これまでの改定の流れを見ると、「1,200枚以上」や「1,500枚以上」に対象が拡大される可能性は極めて高いでしょう。

これにより、月1,500枚前後で集中率95%超の「ごく普通の個人門前薬局」が、一斉に基本料2(29点)へ転落するリスクが出てきました。

クロ

クロ

シロ

シロ

個人でやってる薬局には死活問題だよ…。

基本料1→2への変更で起こる「連鎖的な減収」の恐怖

ここが最も重要なポイントです。

調剤基本料が1から2に変更されると、基本料だけでなく、地域支援体制加算も連動して減額されるのです。

地域支援体制加算の区分

加算区分点数算定要件
地域支援体制加算132点調剤基本料1の薬局、一定の実績要件を満たす
地域支援体制加算240点調剤基本料1の薬局、より高い実績要件を満たす
地域支援体制加算310点調剤基本料1以外の薬局、一定の実績要件を満たす
地域支援体制加算432点調剤基本料1以外の薬局、より高い実績要件を満たす

つまり

  • 基本料1の薬局:地域支援体制加算1(32点)または加算2(40点)
  • 基本料2以下の薬局:地域支援体制加算3(10点)または加算4(32点)

連鎖的な減収の実例

ケース1:地域支援体制加算1を算定していた薬局

項目改定前改定後減少幅
調剤基本料45点(基本料1)29点(基本料2)-16点
地域支援体制加算32点(加算1)10点(加算3)-22点
合計77点39点-38点

処方箋1枚あたり380円の減収です。

ケース2:地域支援体制加算2を算定していた薬局

項目改定前改定後減少幅
調剤基本料45点(基本料1)29点(基本料2)-16点
地域支援体制加算40点(加算2)32点(加算4)-8点
合計85点61点-24点

処方箋1枚あたり240円の減収です。

私が管理薬剤師をしていた薬局は、地域支援体制加算1を算定していました。もしこの改定が実施されていたら、処方箋1枚あたり38点(380円)の減収、つまり月間3,500枚で月額133万円、年間約1,596万円の減収になっていたでしょう。

月1,500枚の個人薬局が「基本料2」に落ちたら?衝撃の減収額

では、実際にどれくらいの影響があるのかシミュレーションしてみましょう。

シミュレーション前提

  • 月間処方箋枚数: 1,500枚(個人経営の門前薬局)
  • 集中率: 96%(特定のクリニックからの処方がほとんど)
  • 改定前: 1,800枚以下なので「基本料1(45点)」
  • 改定後: 基準引き下げ(例:1,200枚以上対象)により「基本料2(29点)」へ転落
  • 連鎖減収: 地域支援体制加算も1→3へ変更(-22点)
  • 合計減収: 処方箋1枚あたり-38点(-380円)

年間680万円の利益が消滅

項目計算式金額
月間減収額1,500枚 × 380円57万0,000円
年間減収額57万円 × 12ヶ月684万0,000円

年間約684万円の減収です。

大手チェーンなら店舗間でカバーできるかもしれませんが、個人経営の薬局で利益が700万円近く減るというのは、経営者の年収が吹き飛ぶか、赤字転落を意味します。

コスト削減のしわ寄せはどこへ?

個人薬局で800万円の穴埋めをするには、どうすればいいでしょうか?

  1. 薬剤師の賞与カット: スタッフ2〜3人のボーナスを全額カットしても足りないかもしれません。
  2. 人員削減: 事務員を減らす、薬剤師をパートに切り替える。
  3. 閉局(M&A): 経営を諦めて大手チェーンに身売りする。

私が勤務していた調剤薬局の社長も、「基本料が下がったら、もう店を畳むしかない」とこぼしていました。それが現実になろうとしているのです。

クロ

クロ

シロ

シロ

働いてる薬剤師さんの給料も絶対下がるよね…。

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個人薬局の「終了」と「生き残り」の分かれ道

2026年改定は、個人経営の小規模薬局にとって「淘汰の始まり」となるでしょう。

終了する薬局(淘汰される側)

  1. 門前クリニックに100%依存している
    – 集中率90%以上で、他の医療機関からの処方箋がない。
  2. 社長が高齢で後継者がいない
    – 「もう十分稼いだし、報酬が下がるなら閉めよう」と考える。
  3. 対人業務の実績がない
    – かかりつけ薬剤師や在宅医療をやっておらず、加算でカバーできない。

生き残る薬局

  1. 「面」で処方箋を集めている
    – 集中率を70%以下に抑えている(健康サポート薬局など)。
  2. 在宅医療に特化している
    – 外来の点数が下がっても、在宅の報酬で収益を確保できる。
  3. M&Aで大手グループに入る
    – 経営権を譲渡し、雇われ薬局として存続する。

私が現在勤めているドラッグストアも、最近近隣の個人薬局をM&Aで吸収しました。元々の経営者だった薬剤師さんは、今は一従業員として働いています。「経営のプレッシャーから解放されて良かった」と言っていましたが、収入は大きく下がったそうです。

あなたが今すぐキャリアを見直すべき3つのサイン

以下のいずれかに該当する場合、2026年改定前に転職を検討すべきです。

サイン1:あなたの薬局が「月1,500枚前後の個人門前」である

チェックポイント

  • 月間処方箋枚数が1,200〜1,800枚
  • 処方箋の95%以上が隣のクリニックから
  • 経営者が個人(社長=管理薬剤師など)
  • 「うちは1,800枚以下だから大丈夫」が口癖

リスク

  • 基準引き下げの直撃を受け、基本料2に転落
  • 年間数百万円の減収で、ボーナスカットや給与遅配の恐れ
  • 最悪の場合、突然の閉局・解雇

アクション

  • 経営状態が悪化する前に、安定した経営基盤のある企業へ転職
  • 「個人薬局の温かさ」は魅力ですが、生活を守るためには「経営の安定性」も重要です

サイン2:薬局の経営者が「改定への対策」を語らない

チェックポイント

  • 経営者が財務省提言を知らない
  • 「今まで通りでいける」と楽観視
  • 対人業務強化の具体策がない

リスク

  • 改定後に突然の人件費削減(昇給停止、賞与カット)
  • 経営破綻・店舗閉鎖のリスク

アクション:

  • 経営方針を確認し、納得できなければ転職を検討
  • 先進的な取り組みをしている薬局を探す

サイン3:あなた自身が「対人業務」に自信がない

チェックポイント:

  • かかりつけ薬剤師指導料を算定したことがない
  • 残薬管理、服薬指導の経験が少ない
  • 在宅医療に携わったことがない

リスク:

  • 今後の薬剤師市場で「スキル不足」と見なされる
  • 転職時に不利になる

アクション:

  • 対人業務を学べる環境に早めに移る
  • 在宅医療、かかりつけ薬剤師業務の経験を積む

私自身、調剤薬局で管理薬剤師をしていた頃、「調剤業務さえできれば大丈夫」と思っていました。しかし、ドラッグストアに転職してOTC販売や健康相談に携わる中で、「対人業務の幅」が広がったことが、今のキャリアの安定につながっています。

よくある質問:基本料削減への不安を解消

Q1: うちの薬局は基本料2だから、もう影響ないですよね?

A: いいえ、基本料2の薬局もさらなる削減リスクがあります。

財務省の提言では、調剤基本料全体の「適正化」が主張されています。つまり:

  • 基本料1の点数が下がる(例: 45点→40点)
  • 基本料2の点数が下がる(例: 29点→25点)
  • 基本料3以下も同様に削減

というシナリオも十分あり得ます。

また、基本料2の薬局でも、後発医薬品調剤体制加算や地域支援体制加算の削減による影響は避けられません。「今は基本料2だから安心」ではなく、「さらに厳しくなる」と考えるべきです。

Q2: 集中率を下げれば基本料1を維持できますか?

A: 理論的には可能ですが、現実的には非常に困難です。

集中率を下げるには:

  • 複数の医療機関から処方箋を受け付ける
  • 立地を変える(門前から離れる)
  • 面対応型の薬局に転換する

しかし、これらは薬局の「経営方針」や「立地」の問題であり、一薬剤師として働く立場では変えられません。

私が管理薬剤師だった頃、「集中率を下げたい」と思っても、門前薬局である以上、どうすることもできませんでした。結局、「自分が動く」という選択をしたのです。

Q3: 2026年改定前に転職するべきですか、それとも改定後の状況を見てから判断すべきですか?

A: 2026年改定前に動くべきです。理由は以下の通りです。

改定前に動くべき理由:

  1. 求人が豊富:改定前は薬局の採用意欲が高い
  2. 選択肢が多い:良い条件の求人を選べる
  3. 年収交渉がしやすい:改定後は人件費抑制で交渉余地が減る

改定後に動くリスク:

  1. 求人が激減:多くの薬局が採用凍結
  2. 条件が悪化:年収ダウン、非常勤のみの募集
  3. 競争が激化:転職希望者が増えて倍率上昇

私が調剤薬局からドラッグストアに転職したのは、2022年度改定の直前でした。「改定後は求人が減る」という予測が的中し、転職のタイミングは正解だったと実感しています。

改定後に動こうと思っても、その時にはもう良い求人がなくなってるかもしれないんだね。

クロ

クロ

シロ

シロ

早めに動いた人だけが有利な条件で転職できるってことか…。

まとめ:基本料削減は「連鎖的な減収」を引き起こす。今こそ行動を

この記事では、調剤基本料削減による「連鎖的な減収」の仕組みと、薬剤師への影響について解説しました。重要なポイントをおさらいしましょう

  • 財務省は「枚数に関わらず集中率が高い薬局は除外」と提言
  • 現実的には「1,200枚以上」や「1,500枚以上」に対象が拡大される可能性が高い
  • 月1,500枚程度の個人門前薬局が、一斉に基本料2へ転落する危機
  • 処方箋1枚あたり380円の減収で、年間700万円近い利益が消滅
  • 個人経営の薬局は「閉局」か「身売り」の二択を迫られる
  • 2026年改定前に、沈みゆく船から脱出する準備を

調剤基本料の削減は、一見「たかが16点」と思えるかもしれません。しかし、地域支援体制加算との連動により、実際には38点(地域支援体制加算1の場合)もの減収になります。

私自身、調剤薬局で管理薬剤師をしていた頃、「基本料1を維持できている間は大丈夫」と思っていました。しかし、今回の財務省提言を見て、「あの時に転職して本当に良かった」と心から感じています。

現在、新人薬剤師の教育担当として多くの若手と接していますが、「早めに動いた人だけが、自分の希望するキャリアを実現できている」ことを日々実感しています。

基本料の削減って、表面的な数字以上に影響が大きいんだね。加算との連動を考えると、本当に深刻な問題だよ。

クX

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シロ

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