2020年診療報酬改定のポイント~薬剤師はこれから何をすべきか~

7 min

昨年末に2020年の診療報酬改定の基本方針が発表され、1月10日には診療報酬改定の議論を整理した資料が発表されています。

今回は上記資料について薬剤師に関係があるところをピックアップし、4月の診療報酬改定の理解を早めていただければと思います。

2020年診療報酬改定の基本方針

改定の基本認識

  • 健康寿命の延伸、人生100年時代に向けた「全世代型社会保障」の実現
  • 患者・国民に身近な医療の実現
  • どこに住んでいても適切な医療を安心して受けられる社会の実現、医師等の働き方改革の推進
  • 社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和

これらの目標を達成するために大きく令和2年度診療報酬改定では4つの基本方針が示されたんだ

クロ

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4つの基本方針

  1. 医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進
  2. 患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現
  3. 医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの推進
  4. 効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上

赤字になっている医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進は、重点課題です。

クロ

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Ⅰ.医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進

医師等の長時間労働などの厳しい勤務環境を改善する取組の評価(Ⅰー2)

(3) 薬剤師の病棟業務の実施により医師の負担軽減を推進する観点から、病棟薬剤業務実施加算について評価を見直すとともに、対象となる病棟を見直す

(4) 医療従事者の柔軟な働き方に対応する観点から、病棟薬剤業務実施加算及び薬剤管理指導料について常勤薬剤師の配置に係る要件を見直す

Ⅱ.患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現

かかりつけ機能の評価(Ⅱ-1)

(3) 複数の医療機関を受診する患者の重複投薬の解消を推進する観点から、医師が自ら重複投薬の有無等を把握し、他の医療機関間の連絡・調整を行う取組や、薬局による重複投薬の有無等の確認の結果を活用して、かかりつけ医が重複投薬に関する他の医療機関との連絡・調整等を行う取組について新たな評価を行う。

(4) 対物業務から対人業務への転換を進める観点から、かかりつけ薬剤師指導料及びかかりつけ薬剤師包括管理料について、患者のプライバシーに配慮することなどの要件を見直すとともに評価を見直す

(5) 患者が同じ薬局を繰り返し利用することを推進する観点から、以下の見直しを行う。

  1. 6月以内に同じ薬局を利用した場合の薬剤服用歴管理指導料について、再度の来局期間や対象となる薬局等の要件を見直す。
  2. 調剤基本料について、異なる医療機関からの複数の処方箋をまとめて1つの薬局に提出した場合の評価を見直す。
  3. 薬剤服用歴管理指導料について、患者が普段利用する薬局の名称等を手帳に記載するよう患者に促す観点から要件を見直す。

地域との連携を含む多職種連携の取組の強化(Ⅱ-3)

(1) 医療機関と薬局との連携強化やきめ細かな栄養管理を通じてがん患者に対するより質の高い医療を提供する観点から、外来化学療法加算等の評価を見直す。

重点的な対応が求められる分野の適切な評価(Ⅱ-7)

緩和ケアを含む質の高いがん医療の評価(Ⅱ-7-1)

(4) 医療機関と薬局との連携強化やきめ細かな栄養管理を通じてがん患者に対するより質の高い医療を提供する観点から、外来化学療法加算等の評価を見直す。(II-3(1) 再掲

(5) がん患者に対するより質の高い医療を提供する観点から、薬局が患者のレジメン等を把握した上で必要な服薬指導を行い、次回の診療時までの患者の状況を確認し、その結果を医療機関に情報提供した場合について新たな評価を行う。

薬局の地域におけるかかりつけ機能に応じた評価、薬局の対物業務から対人業務への構造的な転換を推進するための所要の評価の重点化と適正化、院内薬剤師業務の評価(Ⅱ-10)

(1) 地域に貢献する薬局を適切に評価する観点から、地域支援体制加算について、薬局の質を把握・評価する指標(いわゆる薬局KPI)等を参考に要件及び評価を見直す

(2) 対人業務の推進及び重点化の観点から、内服薬の調剤料の評価を見直すとともに、以下の取組を行う。

  1. 対物業務から対人業務への転換を進める観点から、かかりつけ薬剤師指導料及びかかりつけ薬剤師包括管理料について、患者のプライバシーに配慮することなどの要件を見直すとともに評価を見直す。(II-1(4)再掲)
  2. 薬局が処方医からの指示に基づき、薬剤の重複投薬等を確認し、その結果を文書等で報告した場合について新たな評価を行う。
  3. がん患者に対するより質の高い医療を提供する観点から、薬局が患者のレジメン等を把握した上で必要な服薬指導を行い、次回の診療時までの患者の状況を確認し、その結果を医療機関に情報提供した場合について新たな評価を行う。(II-7-1(5) 再掲
  4. 医療機関と薬局との連携による残薬への対応を推進する観点から、薬局の薬剤服用歴管理指導料等について、お薬手帳による医療機関への情報提供等の要件を見直すとともに、分割調剤時における薬局から医療機関への情報提供に関する評価を見直す
  5. 喘息等の患者について、医師の求めなどに応じて、練習用吸入器等を用いて吸入指導を行い、その結果を医師に情報提供した場合について新たな評価を行う。
  6. 経管薬剤投与が行われている患者が簡易懸濁法を開始するに当たり、医師の求めなどに応じて、薬局が必要な支援を行った場合について新たな評価を行う。
  7. 地域において医療機関と薬局が連携してインスリン等の糖尿病治療薬の適正使用を推進する観点から、医師の求めなどに応じて、調剤後も副作用の有無の確認や服薬指導等を行い、その結果を医師に情報提供した場合について新たな評価を行う。

(3) 対物業務から対人業務への構造的な転換を進めるため、薬局の内服薬の調剤料及び対人業務に係る薬学管理料の評価を見直す

(4) 特定の医療機関からの処方箋の受付割合が著しく高く、かつ、処方箋の受付回数が一定程度ある薬局について、医薬品の備蓄の効率性や医療経済実態調査結果における損益率の状況等を踏まえ、調剤基本料の要件を見直す

(5) 医薬品の備蓄の効率性や損益率の状況等を踏まえ、特別調剤基本料について要件及び評価を見直す。また、地域でかかりつけ機能を発揮する薬局を普及・推進する観点から、いわゆる同一敷地内薬局の調剤基本料について、かかりつけ機能に係る基本的な業務を実施していない場合の要件を見直す

(6) 薬剤師の病棟業務の実施により医師の負担軽減を推進する観点から、病棟薬剤業務実施加算について評価を見直すとともに、対象となる病棟を見直す。(I-2(3) 再掲)

(7) 医療従事者の柔軟な働き方に対応する観点から、病棟薬剤業務実施加算及び薬剤管理指導料について常勤薬剤師の配置に係る要件を見直す。(I-2 (4) 再掲)

(8) 入院中の患者が退院する際に、入院前の処方薬の内容変更や中止等の理由、変更後の患者の状況等について、医療機関から薬局に対する情報提供を行った場合について新たな評価を行う。

医療におけるICTの利活用(Ⅱ-11)

(5) 外来患者及び在宅患者に対する情報通信機器を利用した遠隔服薬指導について新たな評価を行う。

(6) 情報通信機器を利用した遠隔服薬指導時に薬局が医薬品を患家に配送等をするに当たり、社会通念上妥当な額の実費を別途徴収できることについて明確化する。

Ⅲ.医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの推進

質の高い在宅医療・訪問看護の確保(Ⅲ-3)

(14) 在宅患者への薬剤管理指導の推進の観点から、緊急時の訪問薬剤管理指導について、医師の求めにより、計画的な訪問薬剤管理指導の対象とはなっていない疾患等に対応するために緊急に患家に訪問し、必要な薬学的管理及び指導を行った場合について新たな評価を行う。

(15) 経管薬剤投与が行われている患者が簡易懸濁法を開始するに当たり、医師の求めなどに応じて、薬局が必要な支援を行った場合について新たな評価を行う。(II-10(2) ⑥再掲)

医療従事者間・医療機関間の情報共有・連携の推進(Ⅲ-5)

(1) 関係医療機関・医療従事者間の効率的な情報共有・連携を促進する観点から、情報通信機器を用いたカンファレンス等の実施がさらに進むよう要件を見直す。(I-4(2) 再掲)

Ⅳ.効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上

後発医薬品やバイオ後続品の使用促進(Ⅳ-1)

(1) 後発医薬品の更なる使用促進を図る観点から、以下の見直しを行う。

  1. 後発医薬品の調剤割合が高い薬局に重点を置いた評価とするため、後発医薬品調剤体制加算について評価を見直す。また、後発医薬品の調剤割合が著しく低い薬局に対する減算規定について要件を見直す
  2. 医療機関での後発医薬品の使用割合の状況を踏まえ、後発医薬品の使用割合が高い医療機関に重点を置いた評価とするために、後発医薬品使用体制加算等について要件及び評価を見直す。また、一般名での処方を推進するために、一般名処方加算の評価を見直す

(2) バイオ後続品の患者への適切な情報提供を推進する観点から、在宅自己注射指導管理料について、バイオ後続品を導入する場合の新たな評価を行う。

医師・院内薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用の推進(Ⅳ-6)

(1) 複数の医療機関を受診する患者の重複投薬の解消を推進する観点から、医師が自ら重複投薬の有無等を把握し、他の医療機関間の連絡・調整を行う取組や、薬局による重複投薬の有無等の確認の結果を活用して、かかりつけ医が重複投薬に関する他の医療機関との連絡・調整等を行う取組について新たな評価を行う。(II-1(3) 再掲)

(2) 入院時は処方の一元的な管理や処方変更後の患者の状態の確認が可能であることから、処方薬剤の総合調整の取組を推進するため、以下の取組を行う。

  1. 入院時に不適切な多剤処方の状態にある患者への対応について、患者の服用薬の総合的な評価等の取組に対する評価とさらに減薬に至った場合の評価の段階的な評価体系とする。
  2. 入院中の患者が退院する際に、入院前の処方薬の内容変更や中止等の理由、変更後の患者の状況等について、医療機関から薬局に対する情報提供を行った場合について新たな評価を行う。(II-10(8) 再掲)

(3) 医療機関と薬局との連携による残薬への対応を推進する観点から、薬局の薬剤服用歴管理指導料等について、お薬手帳による医療機関への情報提供等の要件を見直すとともに、分割調剤時における薬局から医療機関への情報提供に関する評価を見直す。(II-10(2) ④再掲)

(4) 対物業務から対人業務への構造的な転換を進めるため、薬局の内服薬の調剤料及び対人業務に係る薬学管理料の評価を見直す。(II-10(3) 再掲)併せて医療機関での外来時における調剤料等の評価を見直す。

(5) 後発医薬品の更なる使用促進を図る観点から、以下の見直しを行う。

  1. 後発医薬品の調剤割合が高い薬局に重点を置いた評価とするため、後発医薬品調剤体制加算について評価を見直す。また、後発医薬品の調剤割合が著しく低い薬局に対する減算規定について要件を見直す。(IV-1(1) ①再掲)
  2. 医療機関での後発医薬品の使用割合の状況を踏まえ、後発医薬品の使用割合が高い医療機関に重点を置いた評価とするために、後発医薬品使用体制加算等について要件及び評価を見直す。また、一般名での処方を推進するために、一般名処方加算の評価を見直す。(IV-1(1) ②再掲)

(6) バイオ後続品の患者への適切な情報提供を推進する観点から、在宅自己注射指導管理料について、バイオ後続品を導入する場合の新たな評価を行う。(IV-1(2) 再掲)

2020年診療報酬改定のポイント

薬局関連で新設される項目、見直しされる項目についてです

クロ

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新設される項目

外来化学療法の質向上のための加算

薬局が患者のレジメン等を把握した上で必要な服薬指導を行い、次回の診療時までの患者の状況を確認し、その結果を医療機関に情報提供した場合

重複投薬の解消

薬局が処方医からの指示に基づき、薬剤の重複投薬等を確認し、その結果を文書等で報告した場合について新たな評価

吸入指導

喘息等の患者について、医師の求めなどに応じて、練習用吸入器等を用いて吸入指導を行い、その結果を医師に情報提供した場合

簡易懸濁

経管薬剤投与が行われている患者が簡易懸濁法を開始するに当たり、医師の求めなどに応じて、薬局が必要な支援を行った場合

糖尿病患者へのフォローアップ

インスリン等の糖尿病治療薬の適正使用を推進する観点から、医師の求めなどに応じて、調剤後も副作用の有無の確認や服薬指導等を行い、その結果を医師に情報提供した場合

その他の新設

その他にも、入退院時の連携、遠隔服薬指導、緊急時の訪問薬剤管理指導、バイオ後発品も加算が新設されそうです。

クロ

クロ

見直し(改悪?)される項目

かかりつけの要件、再来局(6か月→3か月)等、14日以内の内服調剤料の減算、集中率、受付回数による調剤基本料の減算の範囲拡大、診療所敷地内(不動産関係)の薬局の減算、後発品割合の低い薬局の減算の範囲拡大などが挙げられています。

クロ

クロ

2020年の改定では難しい項目

医療機関と薬局の連携による用法・用量の最適化

特定機能病院における使用ガイド付きの医薬品集の策定

シロ

シロ

使用ガイド付きの医薬品集ってなに?

フォーミュラリーのことだよ。
フォーミュラリーって言葉は今後、日本では使われなくなるかもしれない

クロ

クロ

今後生き残りをかけて

2020年の調剤報酬改定で、対物業務の加算である調剤料が減算されました。モノからヒトへと言いつつ、薬局の調剤報酬はまだまだ対物業務分の点数が優遇されています。

ただ、今後はもっと対人業務へのフィーが高くなることが予想されます。

  • 今いる職場が今後も生き残れる職場か考えてみてください
  • 今いる職場で自分は成長できるか考えてみてください。

早く気づけば、それだけ有利になります

管理人

管理人

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